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About the Pictogram and Image Design

ピクトグラムと画像意匠について  筆者:潮崎 宗

ピクトグラムとは、一般に「絵文字」などと呼ばれ、言語を使わずに情報伝達するために用いられる視覚記号のことを言います。下記のように、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会では、競技ごとに、躍動するアスリートの動きを表したピクトグラムが使用されたことから、一躍注目を浴びました。

出典:東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会 大会ブランド保護基準

他方、令和元年意匠法改正に伴い、2021年4月より新たに「画像意匠」が保護対象に加わりました。以前から「物品の部分としての画像」を保護することは可能でしたが、改正意匠法では物品に縛られない「画像のみ」が新たに保護対象となりました。

これにより、ピクトグラムも、案内表示器などの表示画像として使用されるものは、この画像意匠として保護される画像デザインとして、意匠登録することが可能になりました。以下、画像意匠が保護対象となった背景とともに、画像意匠について登録を受ける方法とピクトグラムとの関係についてご説明します。

1.画像意匠の保護対象拡充の背景

IoTに代表される新技術の普及に伴い、いろいろな製品やサービスにおいてGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)を利用する機会が急速に増えてきています。また、クラウドサービスなど、物品に縛られないサービスや、壁や道路などに投影して操作するなど、画像活用の場面が広がりを見せています。

このような状況のもと、画像デザインの保護ニーズが高まってきていましたが、改正前の意匠法では物品との関連性による制約があることから、「意匠権での保護を求められている画像」と「意匠権で保護できる画像」が、必ずしも一致しているとはいえませんでした。

そこで令和元年意匠法改正において物品との関連性を問わずに、画像意匠が保護されるようになり、保護対象の拡充がなされました。

2.保護される画像意匠の内容

現在、画像を含む意匠について意匠登録を受ける方法には大きく以下の2通りあります。

(1)画像意匠(=物品から離れた画像自体)として保護を受ける方法
新たに保護対象として認められるようになった方法であり、記録場所や表示場所を特定することなく、画像自体が保護対象となります。

【登録番号】意匠登録第1672383号
【意匠に係る物品】車両情報表示用画像
【登録番号】意匠登録第1701010号
【意匠に係る物品】アイコン用画像

(2)物品などの部分として画像を含む意匠として保護を受ける方法
従来、保護が可能であった方法であり、物品などに記録され、物品の表示部などに表示された画像が保護対象となります。

【登録番号】意匠登録第1663588号
【意匠に係る物品】情報表示機能付き電気計算機
【登録番号】意匠登録第1658831号
【意匠に係る物品】携帯情報端末機

3.ピクトグラムと画像意匠

(1)従来の物品のデザインとして登録されていた例
改正前の意匠法は、物品意匠のみを保護対象としていたため、例えば、ピクトグラムを構成要素とする看板や標識などの物品として意匠登録することは可能でした。

【登録番号】意匠登録第1381545号
【意匠に係る物品】河川標識
【権利者】国土交通省九州地方整備局長

【正面図】        【背面図】


【登録番号】意匠登録第1136187号
【意匠に係る物品】標識具
【権利者】国土交通省九州地方整備局長

【正面図】        【背面図】


(2)画像意匠制度によって登録が認められた例
改正前の法律では、ピクトグラム自体を意匠登録することはできませんでしたが、今回の改正法では、物品に縛られないピクトグラム画像自体の登録が認められるようになりました。
改正法で新たに導入された画像意匠制度で、意匠登録されているピクトグラムとしては下記のようなものがあります。

【登録番号】意匠登録第1697089号
【意匠に係る物品】経路誘導用画像
【権利者】清水建設株式会社

【画像図】                 【使用状態を示す参考図】


【登録番号】意匠登録第1684689号
【意匠に係る物品】情報表示用画像
【権利者】三菱電機株式会社

【画像図】            【変化した状態を示す画像図1】

【変化した状態を示す画像図2】  【変化した状態を示す画像図3】

【変化した状態を示す画像図4】


これらの登録例のように、基本的には一つの画像で特定の情報を伝達するものから、一連の変化を複数の画像で表したものまで、さまざまな形態が登録されています。なお、上記の「情報表示用画像」に係る画像意匠(意匠登録第1684689号)では、「意匠に係る物品の説明」の欄において、『本画像は、人との距離を保って着席することを促す旨の表示画像である。
本画像は床面等に投影表示され、「変化した状態を示す画像図1」から「変化した状態を示す画像図4」へと順次変化する。』とされています。

上記の登録例からも分かるように、今後は、ピクトグラムを構成する画像自体に特徴がある場合には、まず画像意匠として意匠登録を検討すべきと考えます。