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Ishikura Kei will Propose Signs and Pictograms

石倉京が標識・ピクトグラムを提案します。  筆者:石倉 京

ピクトグラムとは

私、石倉 京は、2009年にオートバイで世界一周をした経験があるのですが、いくつかの国では「まったく文字が読めない」「現地の人の話している言葉が理解できない・話せない」という環境でした。それでも大きな事故を一度も経験せずに日本に帰国できたのは、「信号は世界共通」「道幅の広い道路が優先」といった基本的なルールが統一されていることもありましたが、ほとんどの「道路標識」がピクトグラムだったため、基本的な内容を理解できたところが大きいと思います。

最近は「道路標識」や「非常口」「禁煙」などの標識以外のところでも「ピクトグラム」を見かけるようになってきました。
ピクトグラムとは、伝えたい内容を「特徴的に表した、なるべく単純な絵」です。標識に絵や図を使う場合は芸術性や写実性よりも、「特徴性」「わかりやすさ」が重視されます。
過去に「鳥獣戯画」や「浮世絵」のようなキャラクターの特徴を表した絵を描き、現代では「4コママンガ」や「ゆるキャラ」が流行るという日本の環境では、「施設や設備の位置や方向」「遵守すべきこと」「禁止事項」「危険性」などを広く知らせるには、ピクトグラムが一番向いているのかもしれません。

ピクトグラムの得意な分野は、子供や外国人、一部の障害者などの「字の読めない人」にも「施設や設備の位置や方向」「遵守すべきこと」「禁止事項」「危険性」などの最低限の内容を伝えられることです。駅や空港、役所や病院などの公共施設などでは、むやみに案内標識を多言語表記するよりも、内容を的確に表したピクトグラムを組み合わせることで、すっきりとした、わかりやすい表示にすることができると考えられます。

逆に、駅名や地名などの「固有名詞」を表すことは苦手です。(地名に関しては、ピクトグラムに類似するものとして「国旗」「都道府県・市町村の紋章」などがありますが、広く知られているものは「日の丸」や「東京都のイチョウマーク」など一部に限られます。) 名称の表記は、特に外国人向けには多言語表記の出番なのですが、日本の場合、地名や名称の表記に漢字とアルファベットが一般的に使われているため、漢字またはアルファベットのどちらかが読める外国人に対しては、意外と障壁は低いのかもしれません。


似てないピクトグラム?

近年、上にある「鉄道」のピクトグラムを見ることが多くなりました。これは2本のレールの上を走る電車をデザイン化したもので、JIS規格(JIS Z8210)に制定されています。(古いものには、電車の屋根の上に2本の「架線」があるデザインのものもあるようです。)

JIS規格に制定され、案内標識や地図記号への使用を推奨されているので、新しい標識は必ず、このピクトグラムが使われているのですが、「2本のレールの上を走る車両」ではないモノレール(東京モノレール)や新交通システム(日暮里舎人ライナー)にまで、2本のレールの上を走る電車のピクトグラムが使われています。

調べてみたところ、「JIS Z8210標準案内図用記号」に「鉄道」「ロープウエイ」「ケーブルカー」は規定されているのに、「モノレール」「新交通システム」は規定がないのです。

「地下鉄」の場合、東京メトロと都営地下鉄は、「鉄道」のピクトグラムを使って、「トンネルの中を電車が走っている」標識を作り、駅の入口に設置しています。よりわかりやすい標識を作るなら、「モノレール」や「新交通システム」のピクトグラムを作るべきだと思いました。

私が「鉄道」のピクトグラムを改造して、特徴がわかりやすいように作ってみたのですが、いかがでしょうか。

モノレール1
・東京モノレール
・多摩都市モノレール
モノレール2
・湘南モノレール
・千葉モノレール
・上野動物園モノレール
新交通システム
・日暮里舎人ライナー
・ゆりかもめ
・西武山口線 など
(リニア中央新幹線にも使える)


標識の多言語表記

危険・禁止を知らせる標識を多言語表記するべきではない。

イギリス断崖の標識

これはイギリスで見た、英語・ドイツ語・フランス語・日本語の4ヶ国語で書かれた多言語表記の標識です。
この標識には、大きく分けて2つの問題点があります。

まず、「断崖は危険である」という危険を知らせることと、「断崖に近づいてはいけない(この標識の先には行ってはいけない)」という禁止を知らせることを、重要なことなので4ヶ国語で表記してあるのですが、字が読めない者はこの標識を理解できるのでしょうか?
視覚障害や知的障害で標識が読めない障害者の他、この4ヶ国語が公用語として使われていない地域から来た外国人は標識の意味が理解できず保護区域内に侵入したり、断崖に近づいて転落する危険があります。

次に、各国語の表記の横に、イギリス・ドイツ・フランス・日本の国旗が描かれていますが、これは「英語である」「ドイツ語である」「フランス語である」「日本語である」以外の意味は持っておらず、標識の内容ではありません。
たとえば、日本語を理解できる者は一番下が日本語で書かれているのは一目でわかるので、このような国旗が無くても日本語で読めると考えられ、残りの3ヶ国語も同じ意味のことが書いてあることに気づくでしょう。
英語圏・ドイツ語圏・フランス語圏の人も同様だと考えられます。

この4ヶ国語を理解できる人は(一部重複も考えに入れると)約10億人で、地球の人口の1/7にすぎませんし、日本語やドイツ語を読める人口よりも中国語やスペイン語を読める人口の方がずっと多いのです。

多言語表記するときりがなくなる?

クアラルンプール中央駅の標識

これはマレーシア・クアラルンプール中央駅にある標識で、マレー語・英語の他に日本語の表記のある標識です。
マレーシアに日本語の書かれた標識は存在しますが、日本の駅でマレー語の併記された標識は見たことがありません。

もし「マレーシアに日本語の標識を設置したから、日本にマレー語の標識を設置してほしい」と、マレーシアから要求されたとき、日本の鉄道会社は返答に窮すると思います。
上記のイギリスの標識のように、イギリスに日本語の標識が存在し、日本にも英語の標識は存在します。韓国と台湾には日本語の標識が存在しますので、相互で対等に設置するべきなら、日本の標識にはマレー語が併記されるべきという考え方になります。

しかし、これを世界中の国々が行ったとしたら、数十ヶ国語で小さな字で書かれた標識が林立することにもなりますし、たとえ何ヶ国語で多言語表記したとしても、字の読めない外国人は現れます。

その多言語表記、必要ですか?

クアラルンプール中央駅の標識

ここはあえて「多言語表記が必要そうなところ」の標識を例に出します。上は都営大江戸線の「国立競技場」駅の標識で、駅名は4ヶ国語で表記されています。

世界で使われている文字のうち、使用している人口の比率が高いのは、アルファベットと漢字です。
日本語表記には当然漢字が入りますが、日本語は主要な意味の部分に漢字を使い、かな文字は読み方を表す「ふりがな」や、送り仮名のように補助的に使われることがほとんどです。
漢字は同じ文字で字体の違うものが多数あり、表意文字ですから、日本語を読解できる者は北京語や台湾語で書かれた文のおおよその意味を理解できます。逆もまた然りで、北京語や台湾語を読解できる者は、日本語で書かれた文のおおよその意味を理解できます。

駅名や地名などの標識、「出口」など簡単な言葉の標識は、まったく同じ字を字体の違う漢字で小さく書く「無駄」をやっていることが非常に多くあります。
上記の例では「国立競技場」の文字はまったく同じ文字を日本語と簡体字で表記しているだけですし、隣の「代々木」も「々」の字が日本語にしかないため仕方なく「代代木」になっているだけなので簡体字表記はほぼ無駄だと言えます。
特に漢字は画数が多いため、狭いスペースに押し込むようなレイアウトだと読みにくくなります。これを日本式の漢字に統一して、ひらがなを一回り大きな字にした場合、困る人はいるのでしょうか。

アルファベットにも似たようなことが言えるようで、特にラテン語由来の単語は似ていることが多いのと、表音文字なので、駅名や地名のような名称の表記はローマ字または英語表記のひとつで良いことになります。
(国立競技場駅の場合アルファベット名は「National Olympic Stadium」のような名称にした方がよりわかりやすいでしょう。)

ハングル表記は日本語読みの音写になっています。
おそらく日韓が地理的に近いのと、日本語の標識が韓国にある(ソウル市の条例で韓日英中の4ヶ国語表記を推進していて、日本語はカタカナで表記される)ので対等の立場から付けられたと思われますが、ハングル表記は日本語読みの音写でいいのでしょうか。
さらに、ハングルを読める日本人よりも、漢字やアルファベットを読める韓国人の方が多いと容易に推測できるため、ハングル表記がそもそも必要なのかを韓国人に聞いてみたいところです。

参考(リンクが飛ばない場合は、ブラウザにコピーペーストしてください)
http://japanese.seoul.go.kr/ソウル全域の案内標識を韓国語、日本語、英語、/